だいこんおろし

舞台観劇の感想まとめです。ネタバレ有りです。(更新はまちまちです)

舞台『悪』

舞台『悪』
https://www.mmj-pro.co.jp/aku2015/

日程:2015年1月28日~2月8日
会場:紀伊國屋ホール

作 ・演出: 岡本貴也
出演:高岡奏輔 陳内将 西丸優子 川上ジュリア 青柳塁斗 羽場裕一

主催:MMJ

 

 

陳内将さんがご出演されるというので気にはなっていたのですが、
もう公演も近くなってきたあたりでぴあを覗いてみるとまさかの最前席がぽっかり。
紀伊国屋ホールの最前は体験した事がないのでこれはぁ…となり、思わずチケットを取ってしまいました。
しかしぴあで他の公演日を見ても5列目以降は空きが目立つし通路後ろなんてどこも売れてない状態で大丈夫なのかな…と心配ではありました。

で、当日。
あふれ返る人でいっぱい!でしたが、ことごとく関係者のよう(笑)
多分役者や演劇のファンなんて一桁列ぐらいにしか居なかったんじゃないかと思うぐらい関係者だらけ。
別の意味で圧巻でした。

しかし最前席は座ると奥行きが深くてなんか上向きに斜めになってるんですかね。
座った瞬間、深っ!と驚きました。映画館の椅子に近かった気がします。
目線は割と低くてこりゃ首が痛くなるなぁという感じ。


お話は大学の研究室の教授、助手、生徒らの泥沼愛憎劇…と言ってしまうと、陳腐ですが中盤から微塵も想像していなかった展開に。

教授と助手。二人は不倫関係にあったが自分の研究結果を教授のものにされ、不満に思った助手は関係を断ち切ろうとするが、そうすれば研究室には居られなくするぞと脅される。
そんな言い争いを陳内将さん演じるフリーライターが写真と記事を書き、
それを週刊誌に売ると教授を脅し、金をせしめようとするが、研究室に通う主人公がそんな卑怯なことはやめろと止めに記者に言うが、
逆に母親が病気で金に困っている、というバレバレの嘘を信じ、教授から預かったお金を渡してしまう。

そこから、主人公は”自分”というものを持っておらず、他人に言われるがまま、望むまま行動する人間、というのがじわじわと浮き出てきます。
主人公は助手の女性が望むまま、二人は結婚する。
教授はその事を恨み、研究結果である「神の一撃」により主人公のクローンを作り出す。
そこに主人公と幼なじみで恋心を持っていた少女と、その少女の恋人であり研究室の生徒であった青年も立ち会い、教授の計画に無理やりですが乗るのです。

クローンは見た目は青年である主人公と瓜二つ、でもまだ知能は赤ん坊。
少女は自分を母、教授は父と言って育てることにしますが、成長した彼が成すことは助手の女性を殺すこと。
殺す、ということを当たり前に、でも道徳も教えられ、愛情を真に成長をしますが、最終的に女性を殺してしまう。

そしてクローンは裁かれることになりますが、人工的な命に果たして法で裁かれる権利はあるのか。
登場人物全員が集まり、ここが主軸となる本当の悪は誰なのか、という議場になります。

教授は確かに自分が創りだしたが自分に罪はないと言い、
少女はこの子は言われてやっただけで悪くはない、裁かれるべきではないと言う。
元はと言えば自分を持たない主人公が元凶だ、と誰が犯人か、とドツボにはまっていく。
そんな中、クローンは自分も人間だと主張し裁きを受けさせて欲しいと訴える。

その言動に教授はたかが人工的な命にそんな権利はないと声をあげますが、
最後に、自分の息子に裁きを受けさせたい親がどこにいる、と。

結果としては教授は刑に服したようで、
記者はその後、クローンと会い、人権を手に入れどうにか生活していると話を聞く。
だがそこにいるはずのない教授と少女が現れ、驚いていると、
クローンは自分は進化のツリーに属していないのなら自分から始めれば良い、とクローンを量産していた…。


的な、感じです。
こう書くと訳が分からないですが、もっと細かい心理が描かれていてぐいぐい引っ張られるお話なんですよ!
擬似でも少女とクローンとの親子関係は暖かく描かれていて、
最終的には本当に彼に殺させていいのか、と思い悩みもするので、ラストの教授の台詞がぶわっと来ました…。

陳内さんはロボロボ以来でしたが、今回チャラいチャラい!
人はだますし、助手の女性も襲うし…、ヤンキーでした(笑)
でも佇まいや言葉の調子は品があってそこまでいやらしくないんですよね。
陳内さんの語尾が上がる喋り方は特徴的で素晴らしいですね。すごい好きです。

記者も助手の女性に惚れてしまっていて、殺された時に一番に悲しむ役でした。
愛していたからクローンも許せないけど、結婚までしたのに彼女を守ろうとしなかった主人公に対しても怒りを覚えずにはいられないのですが、本当に主人公がどうしようもない奴でムカムカしてくるほど(笑)

でも相手が望む事をすれば悪いことにはならない、という心理も理解できるんですよね。
とはいえそれだと良いことにもならない。
それがどんどん悪化していきこんな有り様に…やっぱり主人公が発端なので悪いと言えば悪いんだよなぁ…。

しかし、登場人物全員が悪いと言えば悪い、という状態なんですよ。
そんな中クローンだけは殺せと言われて殺した、この事実だけしか悪い事がないのです。
原因をたどればこいつが、あいつが、となるけどでも殺したのはクローン。
誰が悪い、全員悪い。正解が無い。

この公演時期、国内国外どちらでも辛いニュースが多かったので、尚の事善悪を考えさせられる舞台でした。
本当に関係者ばかりの客席で勿体無い!
こういうお話にアイドル起用して観客を集めるべきなんじゃないだろうかなぁ…。

あと感想と関係ないんですけど上演中に後ろの客席でなんか悲鳴?とガタガタ物音がしたりした気がしたんですけど、なんだったんだろう…。