だいこんおろし

舞台観劇の感想まとめです。ネタバレ有りです。(更新はまちまちです)

舞台『カタチノチガウ』

カタチノチガウ Malformed
マームとジプシー/藤田貴大の言葉で描く、約1年ぶりのオリジナル新作。
ぜひ、ご期待ください。
http://mum-gypsy.com/events/katachi

東京公演/TOKYO
日程:1月15日〜18日
会場:VACANT

横浜公演/Yokohama TPAM2015参加
日程:2月9日〜13日
会場:横浜美術館レクチャーホール
*全回英語字幕付き/Subtitled in English.

VACANT追加公演
日程:2月19日〜20日
会場:VACANT

作・演出:藤田貴大
衣装:スズキタカユキ(suzuki takayuki)
映像(文字デザイン):名久井直子
舞台監督:森山香緒梨
音響:角田里枝
映像:召田実子
翻訳:ウィリアム・アンドリューズ
制作:林香菜、植松侑子、門田美和

出演:青柳いづみ、川崎ゆり子、吉田聡

 

 

私が観劇に行ったのは横浜公演でした。
美術館のホールでの公演というのは初めてなのでドキドキしながら行くと、
まずチケットが招待状になっていて封蝋まで。おしゃれでステキ。

中に入ると美術館らしい綺麗な客席ですでに薄暗い。
舞台上は気球やドライフラワー、電球がぶら下がって、
下にはダイニングテーブルや脚立、花壇のような場所、ドミノなど、
とにかく美術が可愛らしい。
外国のおしゃれなインテリア雑誌のような感じで自分の家もこうしたいと思いました。
とりあえず気球のオブジェは国際フォーラムのショップで買えるらしいです。大小でいちまんえん…。

マームさんは映像を上手く取り入れる演出で今回も車のおもちゃにカメラが乗っていてそれを使用したり、
今回は文字もこの日アフタートークゲストの名久井さんがされているとのことで、
とても作品にあったもので素晴らしかったです。

お話は親が違う三姉妹のお話。
でも最初のうちはそんなこと関係なく喧嘩したり遊んだり、普通の姉妹だがだんだんと崩れていく。

血縁関係が複雑でいまいち把握できていないのだけど、
長女と次女は全く血が繋がっていなくて、三女は片親ずつ繋がっている?
次女と三女は父親が一緒のよう。

長女はいろんなことでもうぼろぼろでこの屋敷にいたら駄目だと出て行く。

姉は出て行く前に父親を糾弾したのが妹達は疑問だったがそうして月日がたつうち、真実に気づく、というか思い出す。

姉の右手の親指は少し形が違う。だからフォークも正しく持てない。
その食事の席で姉は屋敷に来た時父親がそれを矯正しようとしたことを糾弾し始める。
どうして、と何回も聞くが父親は答えない。答えられない。

父親は三女が可愛がっていた犬に喉を噛まれ喋ることができなかった。

姉が出て行って三女は精神的にやんでいき、
姉にコンプレックスを抱いていた次女は姉の生活を辿っていく。

次女は姉と肉体関係のあった男と自分も行為を行うことで姉と同調したような、
でも自分という存在を感じることができる、と姉の人生をたどる。

そしてそのうち、父親に肉体関係をせまる。
姉とできるのなら自分ともできるでしょう、と。
それを聞く三女。

姉が父親に性的行為をされかけた時、飼い犬が父親の喉に噛み付いた。
そのまま飼い犬は殺されてしまった。

三女は父親を殺してしまう。

三女は警察に捕まり、一人になった次女は高台の屋敷に住み続けるが、
そのうち地震津波で町は廃れ、屋敷のお金も食料も尽き始めた時、
姉が息子を連れて帰ってくる。
姉は余命が幾許かで次女に息子を託す。

この子の命はあなたのものだからどうしったっていい。
死んだほうがいいのならそれがその子の幸せ。

姉の子どもと町を歩いて津波で流れ着いた劇場の前で子どもの首に手をかける。

涙が止まらなかったです。
青柳さんの凄まじい母性はなんなんでしょうね…。
脚立の一番上に立って吐露する思いは小指の思い出でもそうですが心に直接投げてくるようで本当にすごいです。
でも東京公演の最後で喉を痛めてしまったようで、それだけ毎公演愛を激白しているのだなと感服します…。

同じシーンを何度もくりかえす演出ですが、それなのにきちんと時系列ができてるんですよね。
なんだなんだと思っても最終的にはあれはそういう事だったのか、とかこういう思いだったんだとか。
普通の舞台だったらラストで明かされる思いを知ってからもう一度見ると、っていうのはよくあると思いますが、
マームさんはそれを一回の舞台でしてしまうのです。

お話の内容だけだと毒々しいですが、童話のように幻想的で美しい物語になっているので不思議です。
理解できなくても観て良かったと思えるお芝居です。

しかし、女優さん方の身体能力が異常なまでにすごい。
でんぐり返しを何十回と繰り返したり、何分も一本足でくるくる回りながら息継ぎも殆ど無しに台詞を繰り返したり…。
それでも汗もかかず息も切らさず次の演技をするんですよ…。恐ろしい。
そんななのに演出の藤田さんは毎日追加したりしているようですね。
しかも女優さん方に言わずに台本にページを勝手に増やしたりもするそう。恐ろしい…。
でも、女優さん方も演出に絶対の信頼を置いているのだなぁというのが演じていて感じてくるので本当に素晴らしい劇団だと思います。

ドミノを劇中にパタパタと倒したり、のけぞっているお腹の上に林檎を置いて立ち上がって転がるのをキャッチしたり、
とにかく一発勝負な演出が多し、結構怪我寸前の動きも多いので、そういうのが気になる人には観ててハラハラするだろうなと思います。
でも私も気になるタイプなんですがあまり意識しないで観れました。
それ以上に台詞や動きの方が魅力的なんですよね。

ラストは女優さん方全員涙を流していてもう演劇という枠を超えているというかそういうものでもないような。
とにかく魅力にハマったら病み付きになるお芝居です。
次回作も楽しみだなぁ。